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1 -光がさす場所-

「ねぇマスター、、、
 マスターが何をしても上手くいかないときって、
 どうやって克服してるの?」

ブルー色の液体が入った三角のカクテルグラスを置きながら
女は目の前に立つ如何にもバーテンといったマスターに話しかけた。
マスターはひと口カットチーズに生ハムを巻いた御摘みの皿を女の前に置きながら
「今夜は何かありましたか、慶子さん」と、軽く微笑んだ。

「今夜どころじゃないのよ。
 もう最近散々でさ。どうしようもないの」

朝整えただけの口元には、苦笑いしか出ない。

「だけど慶子さん、そんな風には見えないですよ。
 いつもお店にお越しいただく時はビシッとパンツスーツに身を包んで
 ピンヒールをカツカツ言わせてフロアを歩いていますから。
 ザ!キャリアウーマン!って感じでカッコいいですし。」

「キャリアウーマン、、、 か。」

「私には似合わない形容詞。」と、慶子は心の中で呟いた。
慶子は34歳。とある商社の営業を担当している。
営業成績も常に上位に位置し、同期の男性同僚と上司からも一目置かれ、
部下も数人いて信頼されている。
だが、一部女性社員や準社員からは「女を捨てた冷たいアラサー女」と陰で言われていたりする。
実際に慶子が大きな商談をまとめて帰社した時、
仕事に対する手応えと達成感を胸に抱いて口元を緩ませながら給湯室の前に来たとき、
中から慶子を悪く言う女性陣の声が聞こえ、その心無い言葉に胸を痛めたこともある。

「仕事はさ、地道に誠意をもってやっていれば結果は出てくるものじゃない。
 周りがどんなに私の事を悪く言っても、結果さえ出していれば仕事はある。
 でも、プライベートはそうはいかない。
 求めてくれているって判ってるのに、素直になれないの。
 だからいつも、、、  気持ちがすれ違っちゃう」

カウンターに置いた赤色のスマホの画面をを軽くつつく。

「例の、彼、ですか?」

「そう。例の、彼。
 私より5歳年下の、、 ね。」

彼との出会いは完全割り勘なちょっと特殊なちょっと変わった合コン。
なのに慶子は人数合わせ。
電話口で「お願い!どうしても一人足りないの!慶子助けて!!」と泣きつかれて
親友が幹事をした合コンに出席した。
だから嫌々で参加して、その時抱えていた仕事の事が頭にあって、
参加した男の顔なんていちいち見ていなし
馬鈴薯に土手かぼちゃたちが騒いで飲んでいるのを一歩引いたところで観て
適当に笑って相槌を打っていた。
すると目の前に座っていた京ナスが突然慶子に水を掛けた!

「なにシケた面してんだよ。嫌だったら帰れよな!」

空になったグラスを握った京ナスは慶子に怒鳴りつけ
グラスが割れるんじゃないかと思うくらいの勢いでてーぶりに置いた。

慶子たちが居たテーブルの会話はピタリと止み、
テーブルを取り囲んだ女性陣とと野菜たちが慶子と京ナスを交互に見ていた。
「えっ!なになに!なにか・・・」と慶子を誘った女幹事はオロオロしだし
慶子の隣に座っていた女は冷静に「すいませーん、おしぼりくださいーい!」と店員を呼びつけていた。

「ねぇ・・・
 私、なにかした?
 貴方に対して、悪い事でも言った?」

怒りをこらえながらも冷静に。。。 
濡れた前髪を掻き上げてブスっとした顔で目の前に座る京ナスに
鋭い目で睨みつけた。

「だから、帰れば?」

目を合せず京ナスは答え
慶子の手がワナワナと震え、
イスをスッ飛ばす勢いで立ち上がって
京ナスの眉間にグーパンチをお見舞い!
そして

「じゃぁ、
 遠慮なく帰らせて頂きます!
 素敵な洗礼をありがとう!」

と床に寝転がった京ナスに向かって怒鳴った慶子はそのまま合コンの店を後にした。



その京ナスの顔が今では慶子が持つスマホの待ち受け画面になっている。



「あの京ナス君は、、、 さ。
 私の事を好きでいてくれているのは判るの。
 判るけど、私が素直になれないの。
 京ナス君に出会うまで5年くらい恋愛してなかったからさ
 どうすればいいか忘れてるのよ。」

おでこをカウンターにくっ付けて自分の足元を見る。
仕事でしか履かない黒のピンヒール。
これは慶子の武装衣装の一つ、だ。

「そうですかね。
 慶子さん、しっかり恋愛していると思いますよ。
 今も気が付いているじゃないですか。
 自分が素直になれないから擦れ違っているって。
 だったら乗り越える答え、もう見えているんじゃないんですか?」

顔を上げるとマスターは微笑んでいた。

マスターはふと視線を左腕に落し、
手近にあったロックグラスを取るとそこにV.S.O.Pを注ぎ淹れ
ロック氷をそっと浮かべた。
そしてそのロックグラスを慶子の座っている席から左に2つ離れた席に
コースターの上に乗せた。

それと同時に「トオル先輩!」という少し甲高いが店内に響いた。
声の主を確かめるために左を向くと、そこにはどこかで見た顔があった。
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コメント

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amiさんへ

あらっ!気付きました??
そうなんです。こんな所で書いてましたww
今は構想と文章は頭の中にあるので書き出したいと思っているんですけど
なかなかPCの前に座ることが出来なくて。。。
時間を作ってkeikoさんの章だけでも完結させたいなぁ・・・

と、思っています!!

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